砂丘では、常に風砂の流れが変わり、砂丘植物も生き死のドラマが繰り広げられています。同じ植物が同じ所に一年以上あると言う事は、砂丘が死んでいると言う事です。本ページでは、砂丘に育つ植物とその思い出を語ります。
以下、本ぺージが紹介する砂丘植物です。
ウンラン カワラケツメイ カワラヨモギ
ケカモノハシ コウボウシバ コウボウムギ
ハマエンドウ ネコノシタ ハマゴウ
ハマヒルガオ ハマニガナ ハマボウフウ
ビロードテンツキ
ウンラン
「ウンラン」は、砂の移動が殆ど無くなった砂丘の松林など風砂の弱い半日陰に自生しています。自生は多い所で10本程度、少ない所では1、2本程度で群落をつくります。葉は楕円形で少し肉厚の緑白色で、ソラマメの葉を小さくした様です。大きさは長手で10mm茎に対し互い違いに付き、花は茎の頂点に数個つけます。蕊を囲む花弁は、黄色から朱色の花弁に包まれて、外の花弁の白さと花弁の形が非常に愛らしい。草丈10-25cm位で、丈の高いものは花が付くと、頭部が重くて殆どが倒れてしまいます。開花は9月頃になります。
カワラケツメイ
「カワラケツメイ」、又の名前を「浜茶」と言います。新田地区の海側に自生していました。余り風砂が吹き付ける所では見られませんでした。この画像は、我が家(奥田)の庭に今でも生えているカワラケツメイ (浜茶)です。子供の頃は、お茶の代用としてよく飲んでいました。
カワラヨモギ
「カワラヨモギ」、この植物は、風砂の少ない砂の移動がほとんど無い所の乾燥地に自生しています。余り大群生は見かけませんでしたが、時として1平方メートルに1本で、8-10株程度のかたまりを見たことがあります。株の大きさは色々で、径が20-80cmまで見かけた事があります。「ウンラン」なども近くで見かける事があります。芽立ち時期の葉は、緑白色で非常に柔らかくて細かく、シルクの様で、肌に付けるとヒンヤリと冷たく気持ち良かったです。秋には8mm程度の球形を付けます。
ケカモノハシ
これは「ケカモノハシ」と言う砂丘植物です。左の画像は春先にまだ芽が出ていませんが、前年に群生し、冬を越し葉が枯れた景観です。これが飛砂の流れを大きく変えてしまいます。こんな群生の場合は地下水が高いか、又は直下に赤土の層がある場合が多いです。この植物の根の径0.5-0.7mmで、長さ5-7mもあり、横に長く「ばりん」と言って、戦前戦中はこれを掘って集め「ばりん箒」(画像3枚目)として作り販売、生計をしていた時期もありました。今は天然記念物指定地域になった為、除去する事も取る人も無く、繁茂するのみ。右画像は穂花の時期です。砂丘全体に自生しています。
コウボウシバ
「コウボウシバ」、この植物は砂丘地の中で乾燥が遅い所に群生し、植物体形は「コウボウムギ」に良く似ていますが、葉が少し狭く軟らかく葉の色も少し濃い空色です。雌花は根元に小さく着くのでよく観ないと見落とし、この植物は花がつかないのかと錯覚します。雄花、雌花は異株です。
コウボウムギ
これは「コウボウムギ」と言う鳥取砂丘の代表植物です。葉は葉縁に小さいギザギザがあり、非常に硬く、指が切れる程に鋭いので、この中を素足で歩かない事。種子は大麦と同じ大きさです。種子は「でんぷん」質がぎっしり。私が小学生の頃、海から帰る時、腹が空いた時は、これをかじって空腹を癒した事もあり、又、これを炒って食べた事もありました。これをバイオの力で少し穂の茎を長くすれば、収穫が容易となり、世界の砂漠乾燥地帯の食料に成るのではないでしょうか?。研究の余地がある様な気がします。砂丘全体に自生しています。根は根毛に被われた根球があって、中は空洞になっており、雨上がりでは空洞に水を溜め、乾燥時期には水分を少しづつ植物が使用して乾燥に耐えています。尚、この種子を食用にし、戦後の貧しい時、「ポンガシ」として飢えをしのいだものです。
ハマエンドウ
昭和25年頃、この「ハマエンドウ」は、新田地区の海側に自生し、この実を炒ってお茶としていました。鞘の柔らかいものは草笛として鳴らして遊んでいました。平成元年頃には一つ山、二つ山付近にも多くありましたが、今現在、我が家の周りが市街化区域として3.5m立ち上げ、2階建ての住宅が立ち並び、もともと双子スリバチの底であった我が家は、穴のような所となり、いろんな植物の種子落ちてきて、この「ハマエンドウ」も自然に生えていたこともありました。
ネコノシタ
「ネコノシタ」、これは名前の如く、葉の表面が猫の舌の様にザラザラしています。又、葉は厚く、縁にギザギザ゙があります。画像のように地表を蔓の様に延ばし葉脇から根を下ろし、蔓を風から動かぬよう固定しながら繁殖を広げます。海岸砂丘に多く自生し、小さい砂の塚を作ります。花は8月、黄色い小さい野菊の様な花をつけ、冬は葉が落ちます。
ハマゴウ
「ハマゴウ」は、鳥取砂丘の代表的植物で、砂丘地に於いて唯一の潅木です。葉の表面は光沢があるものの、裏面は無数の細く短い毛が生えて白く見えます。これは葉裏の表面積を多くし、砂表からの蒸発水分の吸収力を増やし、日差しの強い時は葉を丸め葉からの蒸散を防ぎます。花後は硬い径5mm程度の真球に近い実種をつけます。砂を被ってもその砂に合わせて成長するので、2-3mの砂の塚を作ります。風の通り道が変り、この砂塚を崩し根が露出しても強かに活きています。花茎を折ったりするとキツイ嫌な匂いが残り、何時までも取れません。花は一番暑い盛りの8月ですが、陽光が当らないと花は開かないので、朝は遅く夕方は早く萎むので、陽光だけの反応のみではなく、気温にも関係があるようです。
ハマヒルガオ
「ハマヒルガオ」は、砂の移動の少ないスリバチ底や松林の中に自生していますが、特定場所には群生しています。地下茎がネット状に伸び、根は生命力が強く、我が家の畑地では、なかなか取り除く事が出来ませんでした。
ハマニガナ
「ハマニガナ」は、砂丘植物の一つでタンポポとハマヒルガオを合せた様な植物です。花はタンポポと同じく、花が終わると白い綿毛に種をつけて、飛んで子孫を増やします。茎はハマヒルガオの様に横に伸び、砂に潜って砂の面から葉を出しています。又、花や葉の茎や地下の茎折ったり摘んだりすると、乳の様な液を出します。この液は非常に苦いのですが、ウサギは食べるので毒ではないと思います。始終砂に痛め付けられながら、何とか生きているように見えます。風の通り道の砂層や、砂柱の見える風砂の厳しい所では少なく、花はまず見る事は出来ないです。この様な所では枯れる運命にあります。砂丘を歩いて足が砂にめり込み、余り人の歩かない所に見られます。花は5月の終り頃から8月一杯まで咲きますが、日が陰っている時は花が萎んでいます。
ハマボウフウ
「ハマボウフウ」は、砂丘の唯一の食用ハーブです。少し硬いのですが、酢味噌和えにすると、香りを楽しむ事が出来ます。乱獲で最近余り見掛けません。根は2-3mの直根があり、砂地がその程度の深さが無いと育ちません。砂丘の中でも、浅い所に火山灰堆積層があるとダメです。花は人参に似ていて、種子は、ごぼうの種に似ていますが、4-6倍はあります。近年、人工的に栽培されたものが料亭などで出されていますが、ほとんど香りがありません。根には細かい根毛が少しあるようですが、ゴボウ根の様で、持ち帰って移植しても、小さいものは殆ど活着しませんでした。
ビロードテンツキ
これは「ビロードテンツキ」と云い、あまり特記する様な砂丘植物ではありません。名前の如く、葉の表面に白い短い毛が無数にあります。砂丘の風の通り道からずれた所に自生しています。背丈は100mm位で、あまり株が大きくならないので庭石の根締めに使ってみましたが、泥土では根腐れしてしまいました。このことは全ての砂丘植物に言えると思います。